サラウンドプロセッサ


原理

 コンサートホールなどで音楽を聴いている場合には、 楽器から聞き手に到達する音として、 直接音以外に反射音が多数あります。 これらを、

に分けて考えます。
Listening in Concert Hall
コンサートホールでの視聴

 反射音や残響音を人工的に作り出して、 あたかもコンサートホールで聴いているかのように感じさせるのが サラウンドプロセッサです。 後方からの反射音を再生するために、 後方にも2個のスピーカを置きます。 したがって、最低4個のスピーカを使用します。 前方からの反射音を別スピーカで再生し、 中央への音像定位を改善するためにセンタースピーカを追加し、 重低音用にスーパーウーファーを追加すると、 スピーカは合計8個となります (俗にいう7.1チャンネル)。

Listening with Surround Processor
サラウンドプロセッサを用いた視聴

実装方法

 反射音を人工的に再生するには、 直接音に距離に応じた時間遅れと減衰を与えたものを計算し、 それを反射音とします。 これをディジタルフィルタと考えると、 そのインパルス応答は以下のようになります。

Impulse Response
各スピーカへのインパルス応答

実際には、反射音は複数あります。 多重反射もあります。 一部の前方反射音は最初の後方反射音よりも後から聞こえることもあるでしょう。 これに残響音が加わります。
Impulse Response
各スピーカへのインパルス応答

 コンサートホールや教会のような広大で残響時間の長い部屋を模擬しようとすると、 遅延時間は非常に長いものになります。 規模にもよりますが、数百msecから数秒になります。 サンプリング周波数を48kHzとすると、 遅延は数万サンプルから数十万サンプルとなります。 これを通常の非再帰形フィルタで実現しようとすると、 とんでもないことになります。 係数の数Nは数万から数十万になりますが、 その大半は係数値がゼロであり、無駄となります。

FIR Filter
非再帰形フィルタ

このような反射音を効率良く計算するには、 反射音があるところだけを計算するようにします。 下図のように、遅延器の遅延時間を反射音の間隔にすることに相当します。 残響音は、 再帰形フィルタを用いて生成します。
Sparse-Tap FIR Filter
計算の効率化

設計のヒント


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