非再帰形フィルタは 入力信号x(n)とフィルタ係数h0, …, hN-1の 畳み込み演算をそのまま実現したものです。 「T」と書かれた箱は遅延器で、入力をT秒、すなわち1サンプル分遅延させます。 三角は乗算器で、入力と係数hiを掛け算します。 最後に乗算結果の和を求め、これが出力になります。
非再帰形フィルタのインパルス応答は フィルタ係数hiを順に並べたものになります。 インパルス応答長は必ずNサンプルになることから、 FIRフィルタ (Finite Impulse Response filter, 有限インパルス応答フィルタ) とも呼ばれます。 トランスバーサルフィルタ (Transversal filter) とも呼びます。 このフィルタは、係数やタップ数Nが有限値である限りは安定です。
入力信号x(n)と出力信号y(n)の関係は、
N-1 y(n) = Σ hi x(n-i) i=0で表されます。 これをZ変換すると、
N-1 Y(z) = Σ hi z-i X(z) i=0であることから、FIRフィルタの伝達関数H(z)は
N-1 H(z) = Σ hi z-i i=0となります。 ある周波数fにおける伝達関数を求めるには、
z=ejω=ej2πf/fsとおきます。 fsはサンプリング周波数です。 H(ej2πf/fs)の絶対値を計算すると、 周波数fにおける利得 (Gain, 増幅度) がわかります。
再帰形フィルタ (recursive filter) は、 出力y(n)をフィードバックさせる形式のフィルタです。 一般にはインパルス応答長が無限に長くなることから、 IIRフィルタ (Infinite Impulse Response filter, 無限インパルス応答フィルタ) とも呼ばれます。 FIRフィルタよりも小さいハードウェアで同じ特性を実現できますが、 設計を間違えると不安定になります。
入力信号x(n)と出力信号y(n)の関係は、
N-1 M-1 y(n) = Σ bi x(n-i) + Σ ai y(n-i) i=0 i=1で表されます。 これをZ変換すると、
N-1 M-1 Y(z) = Σ bi z-i X(z) + Σ ai z-i Y(z) i=0 i=1であることから、IIRフィルタの伝達関数H(z)は
N-1 Σ bi z-i i=0 H(z)=----------------- N-1 1 + Σ ai z-i i=0となります。
低域通過フィルタ (Low Pass Filter, LPF) や 高域通過フィルタ (High Pass Filter, HPF) などの係数は、 石川高専 山田洋士 研究室ホームページ Digital Filter Desigin Services を使用して計算することができます。